相続の手続きの多くは、ご家族が自分で進められます。戸籍の取り寄せや預貯金の解約は、窓口の案内どおりに進めれば足ります。専門家が要るのは、手続きが多いときではなく「判断」が要るときです。相続人に判断能力に不安のある方や連絡のつかない方がいる、相続が何年も止まっている、会社がある。富山で自分で進める範囲と、相談する境目を整理します。

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1|ご家族で進められる手続きと、使える仕組み

次の手続きは、窓口で案内を受ければ、ご家族で進められます。富山市の方の主な窓口は次のとおりです。

手続き主な窓口(富山市の場合)進めるときの要点
年金・保険・税などの届出富山市役所 市民課の「おくやみ相談コーナー」市の手続きをまとめて案内してもらえる
戸籍の取り寄せ富山市役所 市民課(広域交付)本籍地が県外でも、まとめて請求できる
相続人の一覧図富山地方法務局(法定相続情報証明制度)無料で交付。戸籍の束の代わりに使える
預貯金の解約各金融機関書式と必要書類は金融機関ごとに違う
不動産の調査富山市の税証明窓口(名寄帳)・法務局名寄帳は市町村ごとに分かれている
相続登記富山地方法務局 本局(登記手続案内)過去の相続も、原則2027年3月31日が期限

戸籍の広域交付は、2024年3月1日に始まりました。本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書をまとめて請求できます。

ただし、請求できるのは本人・配偶者と、父母や祖父母・子や孫などの戸籍に限られます。郵送や代理人による請求もできません。

法定相続情報証明制度は、戸籍の束と相続人の一覧図を法務局に出すと、一覧図の写しを無料で交付する仕組みです。預金の払戻しや相続登記で、戸籍の束の代わりに使えます。

期限と順番は「親が亡くなったら、まず何をするか」にまとめています。戸籍の範囲は「相続の戸籍はどこまで集めるか」、窓口は「富山市で相続の相談ができる窓口」をご覧ください。

出典:法務省「戸籍証明書等の広域交付について」/法務局「法定相続情報証明制度について」/法務省「相続登記の申請義務化について」

2|自分で進めた方が、つまずきやすいところ

ご家族で進めていて手が止まるのは、次のような場面です。

  • 戸籍を読み違えて、相続人が一人抜けている(前の結婚の子、養子など)
  • 遺産分割協議書の不動産の書き方が、登記簿の表示と合っていない
  • 名寄帳を1か所でしか取らず、別の市町村の不動産が漏れている
  • 遠方や海外に住む相続人の、署名と印鑑証明書がそろわない

どれも、早く気づけば直せます。困るのは、協議を終えて名義変更の窓口で初めて分かったときです。相続人全員に、もう一度署名と押印をお願いすることがあります。

不動産の漏れを防ぐ方法は「親名義の不動産の調べ方」にまとめています。

ご相談に来られる方は、戸籍集めと預金の解約まではなんとかご自身でできますが、不動産の名義変更で止まっている方が一番多くいます。どこで手続きをしたらいいかわからない、何をしたらいいかわからないといった感じでストップしてしまうのです。また誰に依頼したらいいのかわからないと相談に来られる人もいます。

3|ここから先は「判断」が要る|7つの境目

次の7つは、手続きの数ではなく、判断の難しさで止まる場面です。1つでも当てはまれば、早めに進め方を決めると回り道が減ります。

境目1 判断能力に不安のある方や、未成年の子が相続人にいる

遺産分割協議は、相続人全員で行います。判断能力が十分でない方は、そのままでは協議に加われません。

現在の制度では、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、その方が協議に加わります。申立先は本人の住所地の家庭裁判所で、富山市なら富山家庭裁判所の本庁です。

後見人は、本人の利益を守る立場です。本人の取り分を大きく減らす分け方は、通りにくくなります。後見は、遺産分割が終わっても続きます。

母と未成年の子がともに相続人になる場合も、同じ構図です。母と子の利益がぶつかるため、家庭裁判所に子の特別代理人を選んでもらいます。

境目2 連絡のつかない相続人、行方の分からない相続人がいる

まず、戸籍の附票で今の住所をたどります。住所が分かれば、手紙で事情を伝えるところから始めます。

たどっても見つからないときは、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらいます。管理人は家庭裁判所の許可を得て、本人に代わって遺産分割に加わります。

生死が7年間分からないときは、失踪宣告という手続きもあります。申立先は、いずれも本人の従来の住所地などの家庭裁判所です。

境目3 前の結婚の子や、会ったことのない相続人がいる

前の結婚の子も、今の家族の子と同じ順位・同じ割合の相続人です。

分かれ目は、最初の連絡です。突然届いた書面は、警戒されて返事が来ないことがあります。事情を中立に伝える手紙を、誰の名前で、何を添えて出すかを先に決めます。

境目4 子がなく、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる

子がなく、父母も亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人です。先に亡くなった兄弟姉妹がいれば、その子(甥・姪)が代わりに相続人になります。

亡くなった方の父母の、出生から死亡までの戸籍も要ります。兄弟姉妹の戸籍は広域交付で請求できないため、本籍地への郵送請求が中心になります。

境目5 何年も前の相続が止まっている

名義を変えないまま相続人が亡くなると、その子が相続人に加わります。止まっていた年数が長いほど、話し合う人が増えます。

2024年4月1日より前の相続でも、相続登記の期限は原則として2027年3月31日です。間に合わないときは、相続人申告登記で申請の義務を果たせます。

相続人申告登記に登録免許税はかかりません。ただし、売却などには改めて相続登記が要ります。解く順番は「祖父名義のままの土地」で詳しく書いています。

境目6 会社や事業を残して亡くなった

会社の株式も、遺産分割の対象です。分け方しだいで、会社の議決権を誰が持つかが決まります。

分け方が決まるまで、株主総会で役員を選べないこともあります。継ぐか、売るかの判断も絡みます。事業の行方は、グループの株式会社トマックが「事業承継・M&Aのご案内」でご相談を受けています。

社長が亡くなった直後に会社の側で決めることは、株式会社トマックの「社長が急死したら」にまとめています。

社長がお元気なうちに、遺言で自社株の行き先を決めておく方法は「経営者の遺言書」にまとめています。

境目7 父の相続で、母のこれからまで決める

父が亡くなり、高齢の母が実家に一人、子はみな県外。富山でよく伺う形です。

母が全部を相続すれば、今回の手続きは簡単です。ただ、母の相続(二次相続)のときに、同じ財産をもう一度分けることになります。

母の判断能力が落ちてからでは、実家を売るにも家庭裁判所の手続きが要ることがあります。母のこれからと実家の行方まで見て、誰が何を相続するかを決めます。

出典:裁判所「後見開始」「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」「不在者財産管理人選任」「失踪宣告」「富山県内の管轄区域表」/法務省「相続人申告登記について」/e-Gov法令検索「民法」(第889条・第900条・第1042条)

4|境目に当たったら、手続きの順番を組み替えます

境目に当たると、家庭裁判所の手続きが間に入ります。そのぶん時間がかかるので、次の順に組み替えます。

  1. 戸籍で相続人を確定し、関係図にする
  2. 財産を一覧にして、借金があるかを確かめる
  3. 家庭裁判所の手続きが要るなら、先に申し立てる
  4. 遺産分割協議をして、協議書を作る
  5. 預貯金と不動産の名義を変える

期限のある手続きは、組み替えた順番と突き合わせます。

期限手続き間に合わないとき
知った時から3か月以内相続放棄家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられる
死亡を知った日の翌日から10か月以内相続税の申告・納税申告が要るかを早めに確かめる
原則2027年3月31日(2024年4月以降の相続は知った日から3年以内)相続登記相続人申告登記で義務を果たせる

借金が心配なときは、3か月の内に財産と借金の調べを終えます。家庭裁判所の手続きを待っていると、この期限に間に合わないことがあるためです。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」/国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」/法務省「相続登記の申請義務化について」

5|トマックがお手伝いすること

自分で進められるところは、ご家族で進めていただいて構いません。トマックがお手伝いするのは、境目から先の「判断」と「段取り」です。

  • 状況を整理して、進め方と順番を決める
  • 遺産分割協議書や、最初にお送りする手紙など、必要な書類を作る
  • トマックがご相談の窓口になり、提携する士業専門家と連携して進める

相続人の間で争いが続いている場合は、お引き受けできません。話し合いができる状態であることが前提です。

これまでに進めてきた相続の例は、複雑な相続の事例に載せています。事務所は高岡市にあり、富山市をはじめ県内どこからでもご相談いただけます。

まだ相続が起きていない方は、遺言で備えられる境目もあります。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言の内容がそのまま通りやすくなります。おひとりの方の備えは「4つの備え」でご案内しています。

▶ 相続手続き・遺言のご相談はこちら(初回相談は無料です)

※ ご相談の窓口は行政書士法人トマックが務め、提携する士業専門家と連携して進めます。

※ 本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。手数料や窓口の受付時間は変わることがありますので、手続きの前に各窓口でご確認ください。